研究概要 |
今年度は合計8名の男女大学生(男5名、女3名、平均年齢・21.0±2.24歳)が実験の目的・概要について説明を受け、文書による同意を得た上で実験に参加した。実験日は太陽光をゴーグルで遮光し、高照度条件では被験者は、10時から18時まで持続的に2,500ルクスの高照度光を浴び、その間2時間おきに脳波検査によるMSLT、VAS(眠気・覚醒度・疲労度)、P300を40分間実施した。P300のオドボール課題は、4種類の500Hz、800Hz、1KHz、2KHzのトーンバースト音を用いた。対照実験は、200ルクス以下の室内光で過ごし同様の検査を行った。2つの実験はカウンターバランスにより順序効果を考慮し、最低限2週間の期間をおいて実験日前1週間は睡眠覚醒リズムが規則正しいことを行動計で確認して行った。VASによる主観的眠気には有意な変化はなかったが、MSLTによる客観的眠気は高照度条件で有意に減少し(F=11.8,p<.05)、オドボール課題の反応時間は高照度条件で有意に短縮した(F=8.47,p<.05)。またP300については、8名のうち十分な測定結果が得られた7名に解析した。P300潜時は高照度条件で有意に短縮した(F=48.40,p<.001)が、振幅には有意な変化は認められなかった。これらの結果は、持続的な高照度光照射が眠気の低下(MSLTスコア上昇)、脳内の注意認知過程の充進(P300潜時短縮)を生じ精神作業遂行能力を向上させたが、その際の自覚的な眠気が必ずしもその変化を反映しないことを示していた。今回の実験では高照度光は、実験開始時から照射しておりその位相変化作用よりは覚醒機能の充進による作用と考えられた。さらに次年度被験者を増やしながら、P300を含めた注意認知機能のサーカデイアンリズムによる変化および2500ルクス以上の高照度光照射条件の作用機序を検討する予定である。
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