研究概要 |
今年度は計9名の男女大学生(男性5名・女性4名)に実施した。実験の概要・予想される問題点については,書面による説明で同意を得た。自宅と実験室の間は太陽光をゴーグルで遮光し,高照度条件では被験者は,10時から18時まで持続酌に3.000ルクスの高照度光を浴び,2時間おきにMSLT(反復性睡眠潜時検査),VAS(眠気・覚醒度・疲労度),P300測定を実施した。P300のオドボール課題は,4種類のトーンバースト音を用いてランダム化して施行した。対照実験は,200ルクス以下の室内光で過ごした.両実験はカウンターバランスにより順序効果を相殺し,2週間の期間をおいて実施した。P300については,潜時は高照度条件で有意に短縮し,振幅についても有意に振幅が増加した。VASによる主観的眠気には有意な変化はなかったが,MSLTによる客観的眠気は高照度条件で有意に減少し,オドボール課題の反応時間は高照度条件で有意に短縮した。この結果は,持続的な高照度光照射が眠気の低下(MSLTスコア上昇),脳内の注意認知過程の充進(P300潜時短縮)を生じ精神作業遂行能力を向上させたが,その際の自覚的な眠気が必ずしもその変化を反映しないことを示していた。今回の実験では高照度光は,実験開始時から照射しておりその効果は位相変化作用よりは覚醒機能の充進による作用と考えられた。次年度は最終年度として,α波のパワー値やP300を含めた注意認知機能の詳細な分析検討を高照度光照射の作用機序を含めて検討する予定である。
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