研究概要 |
本年度は,(1)多属性-多肢選択意思決定における,合理的選択基準に反した文脈依存的な選択を検討する実験の実施と,(2)多属性意思決定に関わるモデルの構築と理論的展望といった2側面から研究を進めた.(1)まず,商品購買における多属性意思決定実験の刺激材料を確定するため,大学生が購買意欲を持つ商品カテゴリー(サービスも含む)と,その商品選択において注目される属性とその値に関する予備調査を2回行い,調査結果を論文にまとめた(都築・松井・木村,2006).この刺激材料を用いてさらに予備調査を3回行い,各商品カテゴリーにおいて基準となる2肢(ターゲット,コンペティター)選択の場合,両者の選択頻度がほぼ等しくなるように2属性の値を決定した.本実験では,先の予備調査結果をふまえて,20個の商品カテゴリーを刺激材料に用い,ターゲットとコンペティターに対する第3選択肢の2属性の値を詳細に操作した.パソコンで実験制御と反応(選択肢,反応時間,確信度)測定を行い,2肢選択と対比した際に非合理的な文脈依存的選択現象として知られる,3肢選択課題における,魅力効果(3肢選択でターゲットの選択率が高くなる),類似性効果(3肢選択でコンペティターの選択率が高くなる),妥協効果(3肢選択で第3選択肢の選択率が高くなる)の3つに関する検討を,160名の大学生を実験参加者として行った.実験結果については,現在,詳細に分析中である.(2)次に,理論研究の領域では,著者らのモデルをはじめとして,多属性意思決定における文脈効果に関わる最近のモデル研究の動向を展望論文にまとめた(都築・松井,2006).さらに,本研究のモデルはコネクショニストモデルに基づいているが,先年度から準備を進めてきた,高次認知のコネクショニストモデルに関する著書が刊行された(都築・楠見2005).
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