研究課題
基盤研究(C)
ラットの空間行動が、環境刺激を利用する「他者中心的」方略によって行われることが知られている。しかし、自分の運動によって自分の身体内部に生じる刺激を利用する「自己中心的」方略によって行動することを系統的に明らかにした研究は少ない。本研究は、この「自己中心的」方略による空間行動に関わる実験パラダイムを確立し、脳の選択的損傷による行動の障害との関係を検討した。「自己中心的」方略に基づく行動として、広場内のホームから出発し、探索行動の後に餌を見つけ、その場所から最短距離でホームに戻ってくる行動(これをホーミング行動と言う)を取り上げた。ラットは、この行動において、餌を見つけるまでの往路で生じた刺激に基づいて経路統合を行い、復路の経路を決定していると考えられる。この実験パラダイムでは、ラットによる装置外刺激の利用可能性をできるだけ低減することにより、「自己中心的」方略による行動の可能性が高まるため、本実験では、外部刺激としての視覚的・嗅覚的刺激の統制を行った。健常なラットは、通常、大きな餌を見つけた場合、その餌をその場所で食べないで、ホームに持ち帰ることが確認された。その上で、海馬あるいは頭頂葉損傷を行い、ホーミング行動に及ぼす損傷効果を検討した。その結果、両損傷ラット(特に海馬損傷ラット)の成績が無手術統制ラットよりも劣っていた。さらに、「他者中心的」方略での行動に与える損傷効果をモリス型水迷路の場所課題で調べたところ、海馬損傷ラットにのみ障害が認められた。本結果は、平成18年度の日本動物心理学会ならびに日本心理学会の年次大会において報告する予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
心理学研究 76巻・4号
ページ: 352-358
Physiology & Behavior 84(4)
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Behavioral Neuroscience 119(2)
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