研究概要 |
本研究では2つの事態「どちらを選択しても報酬は得られるが、速く反応すれば少ない報酬,遅く反応すれば多くの報酬がもらえる」における選択行動の脳メカニズムの解明を目的とする。サルをディスプレイの前に位置したモンキーチェアに座らせる。(1)サルがレバーを3秒間押すとディスプレイ中央の位置に視覚刺激(S1)が提示される。この時サルがレバーを離せば早反応報酬が得られる。(2)引き続き,サルがレバーを押しつづけていると,遅延3秒後に視覚刺激(S2)が提示される。この時サルがレバーを離せば遅反応報酬が得られる。遅反応報酬の量は常に一定(0.3cc)とし,早反応報酬の量は5種類の課題で変化させた(課題10cc、課題20.21cc、課題30,24cc、課題40.27cc、課題5.0.3cc)。さらに4試行を1つのブロックとして,1ブロック内では4つの異なる報酬を常に一定の順序(オレンジジュース,水,ポカリスェット,無報酬の順序)で与えた。サルの行動分析の結果、課題1では遅反応の割合が100%であるのに対して、課題5では早反応の割合が100%であった。課題2-3では早反応と遅反応が見られたが、課題2から課題3にかけて早反応の割合が徐々に増加した。 今年度は前頭葉から神経細胞活動を記録し、早反応試行と遅反応試行、両試行で反応した神経細胞の性質を明らかにしたところ、早反応試行で3秒前後に観察される細胞は大きく2つのタイプに分類された。(1)遅反応試行で、6秒前後に活動が観察されるタイプ。(2)遅反応試行で3秒前後に活動が観察されるタイプである。前者は報酬期待に関与する細胞、後者は3秒が終了する時点で、早反応か遅反応を決める意思決定に関与する細胞と考えられた。2種類の細胞は、前頭葉背外側部で混在して観察された。報酬量の異なる選択行動における前頭葉背外側部の重要性が明らかになった。
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