1.教育委員会制度への市長介入によって、大都市学区の教育政策形成能力を高めようとしているニューヨーク市学区(2002年)、ロサンゼルス学区(2006年)、シカゴ学区(1995年)、ボストン学区(1991年)に対する面接調査及び資料収集により、以下のような教育委員会制度改革と学校改善のシステムを明らかにした。 (1)ブルームバーグ・ニューヨーク市長は、教育長を直接任命するとともに、市長任命の教育委員を2人から7人に増やし13人体制からなる「教育政策審議会」に格下げした。また、32の地域教育委員会を廃止し、地域教育審議会を設置。各学校には学校リーダーシップチーム(教職員と保護者同数)を組織している。 (2)ビヤライゴーサ・ロサンゼルス市長は、公選制教育委員会を廃止して、学区を構成するロサンゼルス市をはじめとする27の市長で市長会を編成し、市長会が教育長を雇用する構想を提起。州議会、司法当局をも巻き込んだ調整のすえ、公選制教委を維持し教育長め選任権は持つが、市長会は拒否権を有することで合意した。 (3)デイリー・シカゴ市長はヴァーラス教育長についでダンカン教育長を選任するとともに、教育委員会を1999年に復活させた。すべての学校に1989年に設置された学校委員会(保護者が過半数を占める)は存続、新たに教職員リーダーシップ委員会を組織している。 (4)メニーノ・ボストン市長は、1991年以降の任命制教育委員会のもとで、選考委員会方式により教育長を選任するとともに、各学校には教育リーダーシップ委員会を組織している。 2.これらの改革によっても顕著な学力の向上がみられるわけではないことから、教育政策決定決定過程の市長支配システムの導入は10市程度にとどまっており、教職員を中心にした学校運営組織の改善があらためて注目されている実態をまとめ、成果報告書を作成した。
|