最終年度は、本研究の総括を進めるため、子ども理解に基づく発達支援カンファレンス(固有名の事例に基づくもの)の職能開発効果を、同職種、多職種、多校種という三つの位相とその相乗効果という視点から、臨床教育学的に検証する作業を実施した。 実際の発達支援カンファレンスとしては、同職種・学校教師との発達支援カンファレンスを北海道教育大学と函館で、36時間(6時間×6日)実施し、地域・多職種総合の発達支援カンファレンスは、北海道教育大学で、18時間(3時間×6回)実施した。そのカンファレンスの参加者によるエピソード記録及びそれぞれの事例に基づくカンファレンスへの体験記録は128例であった。 理論的には、ヴィゴツキーの情動理論や発達援助理論をベースに、効果検証の理論仮説を構築し、試行研究成果に関する内外の学会発表と研究協議を実施することができた。国内の研究資料収集では、研究方法に関する情報を重層的に収集した。とくにフィンランド・オウル大学のPentti Hakkarainen教授から質的研究に関する貴重な情報を収集できたことは大きな成果の一つであった。 3年間にわたって縦断的に実施してきた「発達支援カンファレンス」の記録と、その当事者たちの内的体験の聴きとり調査(質問紙法及び半構造化面接法)に基づいて、最終年度では、カンファレンスの職能開発効果に関するコーディングと理論化・概念化を実施した。その際、教育学研究者(大学教員)と学校教師(実践者)との相互発達援助システム、すなわち、大学教員のFDと現職教員の教職能カエンパワメントとの相乗的な向上支援システムに関する基本的綱領と理論的輪郭をあきらかにした。その成果は「現職教員と構築し合う臨床教育学」(『臨床教育学序説』[近刊])や、他の関連書学会等において発表する予定である。
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