研究概要 |
本研究の目的は,生徒理解に基づく発達支援カンファレンスの職能開発効果を,臨床教育学的に検証することであった.3年間のカンファレンスの臨床事例の総数は,128例であった.検証の位相は,第1種・発達支援カンファレンス(同職種:学校教師)による職能開発効果,第2種・発達支援カンファレンス(地域・多職種総合)による職能開発効果,第3種・発達支援カンファレンス(地域・多校種総合)による職能開発効果の三つであった.全ての位相において,職能開発効果が認められた. 基礎研究としては,ヴィゴツキー(ВЫготский Л.С.)の情動理論や発達援助理論の枠組みを基盤に,発達支援カンファレンスの理論仮説を構築した.その際,研究成果に関する国際的・国内的学会発表を通して,人間発達援助に関する見解を深めることができた.研究資料収集では,質的研究方法に関する情報を重層的に収集した.とくにフィンランド・オウル大学のPentti Hakkarainenからナラティヴな環境構築に関する研究情報を収集できたことは大きな成果の一つであった. 3年間にわたって縦断的に実施してきた「発達支援カンファレンス」事例の記録(総計128例)と,その当事者たちの内的体験の聴きとり調査(半構造化面接法)に基づいて,最終的には,発達支援カンファレンスの職能開発効果に関するコーディングと理論化・概念化を実施した.その成果は,教育学研究者(大学教員)と学校教師(実践者)との相互発達援助システムの綱領としてあきらかになりつつある.成果の一部は「現職教員と構築し合う臨床教育学」(『臨床教育学序説』[近刊])や,他の関連書学会等において発表する予定である.
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