住民の学習という場合、「教育と学習」を「相互規定的な関係」として捉えると同時に、社会教育施設等の利用の他、マスメディア・インターネットなどを利用した学習も視野に入れ、日常生活(労働・生産・生活過程)に基礎づけられた学習ニーズの把握が重要である。 地域生涯学習の推進を図るうえで、今日地方自治体は財政的条件から、「大学開放」への期待も大きい。その場合、学習過程での「住民参加」(体験的学習)」が必要とされるだけでなく、学習プログラムの作成段階から住民の参画が求められており、行政・企業・ボランティア・NPOなどが「社会的協同」することが求められている。 これまで「大学開放」としては「公開講座」などの学習機会を提供することが中心となってきたが、「研究・教育・地域(社会)貢献」の様々な部面で、地域と連携した事業が考えられるのであり、「授業公開」や「大学ミュージアム」でのボランティア活動の受け入れなど、様々な実践も生まれてきている。 これまで地域生涯学習としては、中高年を主たる対象として「一般教養」を学習するものが多かった。しかし、今後は、地域の生活課題・地域課題の克服を目指す学習活動や、それを可能とする研究などが必要とされている。また、学習内容としては、「キャリア教育」も重視される必要がある。 外国の例としては、スイスやオーストラリアで、日本社会と異なる歴史的・社会的・文化的条件にあることから単純な比較はできないにしても、スイスでは生活協同組合が語学・趣味・教養・スポーツなどの学習事業を展開している。キャリア教育の部面では、国立の職業訓練制度が整備されている。オーストラリアの場合には、TAFEと呼ばれる職業訓練制度があり、移民を受け入れている多民族国家として特徴のある職業訓練システムが組織されている。このような事例から学ぶ点は多い。
|