研究概要 |
本年度は,H.ダイアーの日英交流推進活動のうち,ダイアーの帰国後の活動,とりわけ,1.日本から持ち帰った図書・美術工芸品・楽器類などの寄贈,および,2.精力的な日本研究とその成果の発表をとおした,日本紹介の推進活動について考察した。 1については,(1)ダイアーが遣贈した日本関係資料は分割され,スコットランドには五つの資料群がある,(2)そのうち,グラスゴウのミッチェル図書館にある資料の一部の展示会が,2005年5月・6月に同館で開かれた,(3)それほど大掛かりでなく,図録は刊行されなかったが,ダイアー遺贈品のなかから選ばれた和本,画帖,巻物,軸物が展示され,日本文化への関心を一段と醸成したと思われる,(4)同展は「2005年日・EU市民交流年」におけるイベントとしてグラスゴウ市の主催で開催され,日本・グラスゴウ間の歴史的関係を象徴するものであった,などという諸点を明らかにした。 2については,(1)ダイアーの著作物は,印刷・刊行された図書・冊子42点,雑誌・新聞における論文・論説70点から成る,(2)その主題は工学教育,工学研究,教育改革,社会改革,日本研究に大別できる,(3)19世紀末から世界における日本関心の高まりと日英協力の進展のなか,日本研究を精力的に推し進め特色ある成果を残した,(4)日本あるいはヨーロッパとの比較という方法を随所で駆使し考察を深めている,(5)日本についてはモデル国として位置づけ,日本から学んだ教訓を英国の改革に役立てようとした,(6)日本研究ではお雇い教師としての日本体験と日本観察を存分に生かし,日本が国際社会の一員として台頭してきた原動力の分析とおして,停滞する英国産業社会への教訓をさし示した,などという諸点を明らかにした。
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