本研究第2年目である本年度の研究成果は、以下の2つに大別される。 第一は、教育における「組織マネジメント」概念の検討であり、昨年度に引き続き、ドイツの経営学、行政学における「組織マネジメント」理論に関する文献・資料を収集・分析し、それをどのように教育領域に適用できるかについて考察を行った。その際、(1)「組織学習」論と(2)トータル・クオリティ・マネジメント(TQM)論に着目した。前者については、「学習する組織(Lernende Organisation)」としての学校及び教育行政機関が有する特質を整理した。また、後者については、自己評価、外部評価を軸として質を「証明(Zertifizierung)」するクオリティ・マネジメントの全体システムを明らかにし、そこにこれまでのドイツの教育改革トピックスがどのように位置づけられうるのかを考察した。 第二は、各州における教育改革分析であり、評価を軸とした学校の自律化政策の展開に力点を置いているブレーメン州、財政面及び人事面での学校裁量権の拡大を試みているベルリン州、教員の資質開発に力点を置いているノルトライン・ヴェストファーレン州での改革の詳細を明らかにするとともに、その他の州での改革動向を把握した。特徴的なものとしては、学校監督庁を「学習する組織」へと改革したバーデン・ビュルテンベルク州の事例(特にテュービンゲン上級学務局改革)、専門家チームが学校の認証を行う教育版TUV(技術監査協会)を導入したシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の事例、ISO9000とEFQM(ヨーロッパ・クオリティ・マネジメント財団)モデルを職業学校に導入したザールラント州の事例が挙げられる。
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