研究概要 |
本研究第3年目である本年度の研究成果は、以下の2つに大別される。 第一は、教育領域における「組織マネジメント」概念の検討である。特に、教育の「クオリティ・マネジメント(Qualitatsmanagement)」概念に着目し、これが「質の保証(Qualitats-Sicherung)」と「質の開発(Qualitats-Entwicklung)」を内包する概念であることを確認するとともに、ドイツの教育システムにおいていかなる形で現実化されているのかを分析した。その際、ロルフ(Rolff, H.-G.)による「内容の制御系」、「実践の制御系」、「経営の制御系」、「評価の制御系」の4つの分析枠組みを用いた。 第二は、ドイツとの比較の視点による、カナダにおける教育領域の「組織マネジメント」理論及び実態の分析である。特に、「学習する組織(Lernende Organisation)」との共通性が見出される「Learning Community」概念に着目し、その構造を分析するとともに、この概念を生かしたシステムの特質を分析した。Learning Communityは、生徒の学びに焦点をあてた環境づくりを主眼としており、それを実現するために、ミッション、ビジョン、価値、目標を基盤として成立するProfessional Learning Communityづくりが重視されている。これは、協働的なprofessional Learning Communityが学校改善のための最重要要素であり、それを支えるのが、「省察的実践家(reflective practitioner)」としての教師であるという認識によるものであった。
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