本研究最終年度となる本年度の研究成果は、以下の2つに大別される。 第一は、ドイツにおける教育領域への組織マネジメント導入過程を、ドイツの学会、とりわけドイツ教育行政・経営学会(Deutsche Gesellschaft fur Bildungsverwaltung e.V.)がどのように評価しているのかについての検討である。このテーマが学会においてどのように位置づけられ、また、このテーマを深めていくための課題を学会がいかに認識しているのかを明らかにした。そして、現実の教育改革においては、教育行政官が大きな影響を及ぼしており、彼らの近年の役割変容についての詳細な分析が必要であることを提示した。 第二は、ドイツとの比較の視点による、日本における教育領域の組織マネジメント導入過程の事例分析である。特に、本研究代表者が2002年度より関わってきた愛知県高浜市における「学校評価」を機軸とした「組織開発」のプロセスについて、文字データ及び音声データを詳細に分析し、我が国における教育領域における組織マネジメントの可能性とその課題を明らかにした。そして、重要な要素として、(1)組織マネジメント導入を推進する主体(高浜市においては学校評価検討委員会)の存在とその活動内容の質、(2)人事異動を一つのツールとする学校組織体相互の学びの促進、(3)組織開発開始時のマネジメントに対するキーパーソンの認識、(4)組織開発の中核となるファシリテーターの次世代への継承を提示した。
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