研究概要 |
本研究は、世界市民性の教育の原理・実践・言語を批判的に再構築すると同時に、教育哲学のパラダイムを再構築することを目的とする。アメリカの哲学者、デューイとカベルの「生き方としての民主主義」の批判哲学の現代的意義を「全体性への包摂なき市民性」の視座から解明し、「大人のための教育の哲学」としてもつ意義を明らかにした。研究遂行上、海外研究協力者ポール・スタンディッシュ氏(現・ロンドン大学教育研究所、教授)の協力を得た。平成17年、平成18年に一ヶ月ずつ京都大学大学院教育学研究科に同氏を招聘、日英米の教育哲学者の異文化間対話ネットーワーク形成を促進した。 平成17年度、単著The Gleam of Light: Moral Perfectionism and Education in Dewey and Emerson(New York: Fordham University Press,2005)、およびカベルの著作The Senses of Waldenの邦訳著『センス・オブ・ウォールデン』(法政大学出版局2005)を出版。6月ハワイ大学で開催された東西哲学者会議において、カベルの哲学と世界市民性の教育について論文発表。7月、アメリカ哲学促進学会主催のサマーセミナー(オレゴン大学)にて合計6時間、本課題研究に関わる講義を行なった。10月、『センス・オブ・ウォールデン』出版を記し、国際会議「スタンリー・カベルと大人の教育としての哲学」を開催、英語共著の出版計画がまとまった。平成18年度、5月にオレゴン大学哲学部・文学部共催のエマソン、ソロー、カベルの研究者の会議にて招聘論文発表。6月には、イギリス教育哲学会の会議にて、招聘論文発表。8月には国際教育哲学者ネットワーク隔年次大会(マルタ)にて、カベルとソローの「翻訳の哲学」についての論文発表。10月、本課題研究の総括として、カベル氏を招聘してハーバード大学において、海外協力研究者であるスタンディッシュ氏と共に「カベル会議」を企画、運営し、二つの論文発表。本会議の成果は、スタンディッシュ氏との共編著として出版される。平成19年3月には、アメリカ哲学界で発表した当該研究についての英語の論文が、最優秀論文に選ばれ、IIa and John Mellow Prizeを受賞した。平成17〜18年度を通じ、スタンディッシュ氏の著書、Beyond the Self: Wittgenstein, Heidegger and the limits of languageの邦訳書『自己を超えて』(法政大学出版局出版予定)の翻訳プロジェクト、および、同氏との英語共著、Democracy and Education frow Dewey to Cavellの企画が進行した。
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