本研究は1999年、国家教育法の制定による大規模な教育改革が進展してきたタイにおける教員養成改革の実態把握、分析を直接的な課題とした。それは教育職員免許制度の創設と教曼養成年限の4年から5年への引上げである。前者は教員だけでなく校長等管理職と地方の教育行政職員、指導主事の4種の免許の設定や日本とは異なる免許更新制度も含み、また後者は1年間の学校でのインターンシップを含むものであることから、現在の日本における改革に対する示唆を得ることも目的とした。 具体的には、次の4点についての調査研究を実施し、有益な知見を得ることができた。 1.法制度分析:国家教育法に基づき、2つの関連法が制定され、また教育専門職基準、認証評価基準によって教職に求められる専門性内容から免許取得と教職課程の基準が設定された。 2.免許制度の運用実態全析:4種の免許基準、現職者の取扱い、教育学部以外の卒業者に対する1年課程、研修の累積や教員評価による5年更新制等の実態を解明し、専門職基準の設定による免許制度の運用や学校管理職免許等において、日本の免許制度を見直す視点を提示することができた。 3.5年教員養成課程の教育課程分析:事例校とした一般大学2校、地域総合大学3校の教育課程について、旧4年課程の教育課程との比較も含めて検討し、教育専門職基準との関係や大学裁量の意味等を明かにした。 4.学生の認識と評価の公析:事例5校の教員養成課程学生に対する面談・質問紙調査を実施し、教職に対する理解、評価や教員養成制度改革への評価を明かにし、また5大学の比較からするその規定要因を分析した。
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