研究課題/領域番号 |
17530570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
宮本 健市郎 神戸女子大学, 文学部, 教授 (50229887)
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研究分担者 |
山崎 洋子 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (40311823)
山名 淳 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (80240050)
渡邊 隆信 兵庫教育大学, 大学院・学校教育研究科, 助教授 (30294268)
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キーワード | 時間割 / 新教育 / アメリカ合衆国 / イギリス / ドイツ / 田園教育舎 / ドルトン・プラン |
研究概要 |
本研究には四つの目的があった。第一に、20世紀前半に、子ども中心の教育思想と教育実践(新教育)が国際的な盛り上がりをみせていたころ、アメリカ合衆国、ドイツ、イギリス、および日本の初等および中等諸学校における授業時間割の改革の実態を解明すること。第二に、各国の実態を比較したうえで、新教育に共通する時間割編成原理の特質を明らかにすること。第三に、新教育の時代に普及した柔軟な授業時間割が、授業実践と教師の専門性に与えた影響を明らかにすること。第四に、子ども中心の思想に基づいた授業時間割の現代における有効性を問うことであった。今年度は、第一と第二の目的を中心に研究を進めた。 アメリカにおいては、19世紀末に能率を追求した厳格な時間割が普及したが、1920年代になると、ニューヨーク市のリンカン・スクールやシティ・アンド・カントリ・スクールなど、いくつかの私立の進歩主義学校や実験学校において、教師の自由裁量を大幅に認めた柔軟な時間割が作成されていた。ドイツの新教育を代表する田園教育舎では、授業だけでなく課外活動を含む生活全体が時間割の中に組み込まれたこと、その結果、教育のための時間が細分化され、しかも時間厳守が強調されたことがほぼ明らかになった。このことが、新教育における開放と自由の論理とどのように関連するのかが、これからの検討課題である。イギリスでの時間割改革の議論には、ドルトン・プランが大きな影響を与えていた。イギリスのドルトン・プランの特徴は学問的教科を重視したことだが、そのことと、子どもの自主的な時間割編成を認めるドルトン・プランの原理との関連を今後追求する必要がある。日本では、大正新教育の時代に柔軟な時間割がいくつか実践されたが、なかでも子どもの生活に即した教育を目指していた郷土教育は子どもの生活リズムに着目した時間割を編成していた。それぞれ状況は異なるが、新教育における時間割には、子どもの自由や自治を重視しつつ、教育的な管理を徹底するという矛盾した要素を含んでいたと思われる。この矛盾の解明が今後の課題である。
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