平成19年度の研究実績は以下の通りである。 一、近世中期以後の但馬国出石藩における藩校創設と私塾、郷学校、寺子屋、女学校など学問と教育をめぐる文化的ネットワーク形成を歴史的に考察し、明治初期の「学制」期の小学校創設にいたるまで連続していることを明治7年から10年代にわたる但馬国気多郡伊福村の伊福学校創設関係史料などをもとに解明した。 一、幕末から明治初期、伊賀国名張郡名張本町において寺子屋師匠中村権平が開業した寺子屋「栄寿堂」について寺子屋入門帳三册をもとに寺入りの子どもの学習内容が手習いと十露盤、謡い、読書、素踊りなど芸事を多面的に教授していたこと、往来物、門弟の出身村落、親の生業、束脩と謝儀等について検討をさらに進展させた。また師匠中村権平が名張藤堂藩の一代限りの士分格付をされていたこと、墓石の存在、「乱舞入門控」から謡と踊りの芸事師匠の面と学問書籍の蒐集についても調査検討した。 一、金子幸子他三名編『日本女性史大辞典』(吉川弘文館2008.1刊)の辞典項目「女師匠、女実語教、女商売往来、琴、しつけ、松声堂、田村梶子、手習い、寺子屋、女筆指南、吉田いと」の11項目を分担執筆し、発刊された。 一、太田素子『子宝と子返し-近世農村の家族生活と子育て』の書評を執筆し『教育学研究』74巻4号(2007.12)に掲載された。 一、紀伊国伊都郡赤塚村の大庄屋田中家について引き続き調査して、幕末から明治初期にかけて田中家の子どもの手習い手本、往来物130点余のすべてについて調査をを終えて全冊子の写真撮影を完了した。
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