本年度は、(1)萌芽研究の成果の更なる検討と先行研究の検討、(2)バイリンガル・カリキュラムの基本構想の検討、(3)日本の公立小・中学校における外国人児童・生徒教育の課題を明らかにする調査、(4)試行的バイリンガル・カリキュラムの開発、の4つを計画した。 (1)については、萌芽研究「南米日系人児童・生徒が日本国内で通う外国人学校に関する総合的研究」で課題として明らかとなった学習言語能力を伸ばす教科内容重視の日本語教育のあり方について検討するとともに、アメリカ合衆国イリノイ州アバナ市のバイリンガル教育や第二言語としての英語(ESL)教育の実施状況についての現地調査を行うなどして、バイリンガル教育研究の先進的事例の研究と理論研究を行った。 (2)については、研究協力校であるブラジル人学校「パウロ・フレイレ地域学校」の校長・教務主任などと、2005年1月からの児童・生徒の母語ポルトガル語の言語発達の状況についての評価をベースに、2006年4月以降のバイリンガル・カリキュラム実施の基本的枠組みについて検討した。その結果、日本語教育については、週4時間としながらもその内容を、教科学習の内容に強く関連させていくこと、また、授業以外の教育活動において、児童・生徒が「バイリンガルになること」の意義を確認できる行事等を多く設けることなどが議論され、基本構想に反映させた。 (3)については、研究協力校の地域にある公立小・中学校における調査は準備にとどまり、具体的には実施できなかったが、アメリカの公立小学校におけるバイリンガル教育の調査を通じて、公立小・中学校でのバイリンガル教育の可能性について検討することができた。調査については、平成18年度に実施する予定である。 (4)については、母語ポルトガル語での学習言語能力を生かして、日本語に移し変えていくためのカリキュラムと教材開発を行った。試行までに至らなかったが、自然科学、社会科学、人文科学の基礎的な概念の翻訳対応表を軸とした教材開発を行った。
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