研究協力校であるブラジル人学校「パウロ・フレイレ地域学校」において、本研究の成果に基づき開発した日本語とポルトガル語のバイリンガル・カリキュラムを本格実施し、総合的な評価を行うのが、最終年度の主たる課題であった。母語ポルトガル語により概念形成を行い、それを日本語に転移させるという方法に特徴のある本カリキュラムを通年で展開し、児童・生徒の日本語習得について分析した結果、母語ポルトガル語での認知レベルが日本語習得過程に反映するという、欧米の第二言語習得研究で明らかとされている現象が見られた。単に二つの言語で学ぶということではなく、母語でも日本語でも高い認知レベルを有するバイリンガルの児童・生徒を育てることが日本の外国人学校においても可能であることが明らかとなった。一方、日常会話など生活言語能力の習得は、なお実践的な課題として残されている。 また、本年度は、臨床的な取り組みのなかから、研究協力校が実施している補習教室で毎日放課後に学ぶ、日本の公立小・中学校に通う児童・生徒のバイリンガル教育の可能性について検討することができた。外国人学校や地域と学校が連携してバイリンガルを育てる「地域バイリンガル教育」の可能性が拓かれた。 開発されたバイリンガル・カリキュラムの普及およびバイリンガル教育に関する教員研修については、日本ブラジル人学校協会や関連大学などを通じて実施すべく、準備を進めている段階である。
|