台湾では、1990年代初期から、多元化、自由化、卓越化、国際化の方針によって一連の教育改革が進められてきた。2000年代になっても、その改革はとどまることなく、さらにスピードを増している感がある。教師教育領域における制度改革も例外ではない。1990年代に始まった養成、採用、研修の教師教育の全段階での改革は、今なお、とどまることなく進行している。 初年度は、台湾における教師教育制度の改革の現状を概括的に把握することに主眼を置いた。以下は、平成17年度の研究の概要である。 まず、養成段階では、開放制を導入した1994年の「師資培育法」が2002年に大幅に改正され、「師資培育審議委員会」の設置、養成機関への「師資培育中心」(教師教育センター)の設置、教育実習課程(半年)も包括した「職前教育課程」の導入、公費養成から自費養成原則への転換、等が進められた。教員資格制度では、従来の書類審査による形式的検定を実質化するために、2005年から教員資格検定試験が実施された。一方、一般大学も加えた教員養成数の急増、少子化等から、教員は供給過剰となり、現在、国立の教員養成系大学の定員削減や統廃合が問題となっている。 教員の採用は契約制による。初聘、続聘、長期聘任の3種類がある。初聘については、公平、公正、公開の原則のもとで、地方当局が実施する統一採用試験、または校長により学校ごとに組織される選考委員会によって行われる採用試験で選考される。いずれの場合でも、各学校の「教師評審委員会」の審査を受ける必要がある。合格者は校長によって任用される。初任者の契約は1年である。続聘の契約は、1回目は1年、2回目以降は2年である。続聘が3回以上で勤務成績が良好な者は、「教師評審委員会」の委員の三分の二以上の同意があれば長期聘任ができる。 教員の研修は、学校、教員養成機関、研修センター等で実施されている。学校の場合、毎週一定時間の「加油」時間が設けられている。また、各県では研修を時間数で義務づけている(年間18時間程度)。研修センターも多くの県で設置されているが、センターにおける研修はあまり盛んではない。近年の台湾の研修の特徴は、地方当局による教員養成機関や学校への委任によるものが主であること。自己責任による研修が基本とされていることである。特に、近年、多くの現職教員が関心を持ち、参加しているのが大学院での研修である。国立の教員養成系大学の多くは社会人を対象とした課程を持ち(進修部、推拡部といった組織で担当)、夜間、夏期、土日の課程を開講し、多くの現職教員を迎え入れている。学費は自己負担でありながら、それでも多くの現職教員が参加しているのは、修了後の昇給の利益があるからである。
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