学習成果の厳正な評価判定は、筆記式一斉試験以外で果たして可能なのか。そのイギリス国内での先進的取り組みとその成立基盤について、分権化が進むイングランド・スコットランド・ウェールズの3地域を比較検討することで知見獲得を目指した。そして、先進的取り組みは、特にウェールズ・バカロレア方式を通じて、大学等高等教育機関の入学者選考においてもウェールズばかりでなく、イギリス全体へも波及して実質的に機能し始めていることが、本研究を通じて確認できた。 資料研究としては、インターネット公開の政策文書および実践記録、および連合王国4地域義務教育後能力認証型学校教育課程悉皆データベースCoursediscoverをも駆使して、全体動向の把握に努めた。 現地訪問調査は、以上の資料研究による準備のもと、平成17(2005)年度にスコットランド(成人対象の高等教育入学準備特設課程を中心に)、平成18(2006)年度にイングランド(成人基礎教育および労働組合学習を中心に)、平成19(2007)年度にウェールズとイングランド(非伝統的評価判定を公的認証に通じて大学等入試に積極的に取り込む新方式であるウェールズ・バカロレアを中心に)において実施し、現場にて訪問視察と聴き取りを実施し、現地関係研究者にも聴き取りと意見交換を継続的に実施した。 学会発表は、日本カリキュラム学会、日本生涯教育学会および教育目標、評価学会で計5回行い、『産業教育学研究』『日本生涯教育学会論集』『生涯学習研究e事典』にて研究成果を公にした。そしてさらに、国立大学協会「高大接続ワークショップ」(2008年3月28日、会場:神戸大学)でイギリス高等教育入試制度の事例紹介者として登壇することによって、早速社会に対して具体的に還元できた。
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