学校設置形態をはじめとした教育の多元化は、日本のみならず世界各地で展開している。なかでもアメリカ合衆国は、学校設置形態の多元化におけるモデルとなる国である。今年度もアメリカのチャータースクールという公設民営型学校を対象として、実証的、理論的研究を行った。主たる学術論文としては次の2つを公刊した。1つは「アファーマティブ・アクションとしての実験学校」(『教育学研究』第73巻4号)であり、もう1つが「ライフ・ラーニングの実験学校」(『生涯学習とキャリアデザイン』4号)である。 前者は「格差社会と教育の課題」の特集に寄稿したものであり、新しい教育アファーマティブ・アクションのあり方を規範的及び実証的に分析した。特に、マイノリティの子どもの学業達成を実現する効果のある学校の構成要素として、学校設置権と事実上のアカウンタビリティー定義権が重要であること、この両者の権利を創造する実践が構築主義的アファーマティブ・アクションであることを明らかにした。 後者はカリフォルニア州調査を踏まえたチャータースクールの事例研究である。組織デザイン、学習環境・デザイン、能カデザインの3っのレベルで学校の実証分析を行った。とりわけ、ガバナンスの組織デザインと、プロジェクト学習のコア・カリキュラムのデザインに焦点をしぼり、マイノリティ向けの効果のある学校の実態を解明した。 なお、留学問題のシンポジウム報告をもとにした「体験教育(Experiential Education)としての留学」も研究ノートとして公表した。本研究と関わる知見は、ユニバーサル段階の大学におけるカリキュラムが非構造化する傾向にあること、これを再構造化するなかで留学という体験教育を位置づける必要があることである。
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