本年度の研究は、主に以下のように実施した。 5月には、ドイツで開催された不利益青年の支援に関する日独会議に参加し、教育・職業訓練のシステムが対極的ともいえる日独間で、従来型の移行期システムの機能不全化という点では同様の現象が生じていることを確認するとともに、そうした状況のもとドイツでは、不利益青年の実質的支援の媒介項としてノン・フォーマル領域、社会的教育学の実践者の果たしている役割が大きいことが確認された。ここでの知見ももとに、後に当該の実践をアクションリサーチしてきた研究者たちの論考の翻訳も行い、雑誌に掲載した。この論考では、若者間に新たにつくり出されている格差の背景には、社会関係資本の違いが大きいこと、したがって最も重要なのはインフォーマルネットワークの構築の支援であることなどが、具体的な事例に依拠して示されている。 国内では、北海道、東京、高知、沖縄でおもにNPO組織による実践現場の事例調査を行った。北海道では「ひきこもり」青年を主たる対象にしたNPOなどを訪問し、東京では「若者自立塾」を受託したNPOの訪問を、高知では市立商業高校とアジア地域を結び、その成果をまちおこしにもつなげようとする同校の生徒会OBOGによって組織されたNPOを、沖縄では舞踊を核とした地域における中高生の表現活動を組織する場、などを訪問した。前二者の対象はいわゆる社会参加に困難を抱えた若者たちであり、後二者は学校外でも積極的に社会参加に携わる若者たちである。それらから浮かび上がる知見はまだ未整理な状態だが、次年度は前二者とも異なる形で社会参加に困難を負う若者にも視野を広げ、社会参加の背景にあるものは何か、その困難の支援において何が必要なのかについて、先のドイツを始めとしたEU各国でのユースワーク活動の知見もふまえながら、考えていきたい。
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