本研究は、昨年度(平成17年度)に続く2ヵ年の継続研究であるが、分権改革を背景にして首都圏の市区町村を中心に各地で実施されてきた教育委員(教育長)の公募制・推薦制の実態を調査・分析するとともに、これらの制度の導入.実施が教育委員会の活性化にもたらしたものを実証的に明らかにすることを目指したものである。平成15年度〜16年度科学研究費補助金を受けて実施した「分権改革下における教育長公募制と教育委員会の活性化に関する実証的研究」<基盤研究C(2)>を継承し、それをより発展させることを企図したものである。 本年度(平成18年度)の研究成果の概要は、概ね以下のようなものである。 1)本研究であらたな対象とした教育委員の公募制については、その先駆けとなり2人の教育委員を順次公募した大平町(栃木県)や教育長と同時公募した国立市(東京都)などを訪問し、公募制の背景、制度の概要と特徴、教育委員会の活性化に与えた影響などの一端を明らかにすることができたこと。 2)教育長公募制に関しては、公募教育長と当該教育委員会のその後の活動をフォローすることができた。その中で判明したことは、教育長公募制を実施した3分の1にあたる5市町が今次の市町村合併によって姿を消したことである。合併後の新自治体で「再任」された公募教育長は、白河市(旧・白河市教育長)と有田町(前・西有田町教育長)のみである。富士見町(長野県)、(新)白河市(福島県)教育長を再訪・面談して明らかになったことの1つは、年々厳しさを増している自治体財政の中での教育委員会の自主的諸施策の実施の困難さである。 3)教育委員会の推薦制に関しては、沖縄県庁・県教委などから、本土復帰を契機に導入・実施してきた県教育委員の「団体推薦制」の歴史とその運用における問題点、廃止にいたる事情などを把握することができた。
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