本研究の主な目的は、1)分権改革を背景として全国30前後の市区町村で実施されてきている教育委員(教育長)の公募制・推薦制の実態を調査・分析するとともに、2)この制度の導入・実施が教育長および教育委員会のあり方、さらには教育委員会の活性化にもたらしたものを実証的に明らかにすることを企図したものであり、3)さらにそれらを踏まえて、焦眉の課題の一つである教育委員会制度の改革課題への示唆を明らかにすることである。なお、本研究は、これに先立って平成15年度〜16年度科学研究費補助金を受けて実施した「分権改革下における教育長公募制と教育委員会の活性化に関する実証的研究」(基盤研究C(2))を継承し、それを発展させることを目指したものである。先行研究が教育長公募制を対象にしているのに対し、本研究は教育委員の公募制(推薦制)を主たる対象にしている。 本研究による成果の概要は以下の諸点である。1)全国の15市区町村で実施されてきた教育委員公募制・推薦制の制度的全容をほぼ明らかにできたこと。2)それぞれの公募制(推薦制)の共通点とともに自治体ごとの多様性や特徴点を明らかにできたこと。3)教育長公募制の先行研究以後の展開と現状および諸問題を明らかにできたこと。4)教育長公募制と教育委員公募制の共通点と相違点を実証的に明らかにできたこと、などである。 教育委員会(制度)の"形骸化"が指摘され、その"活性化と再生"の必要性が政府・文科省関係の審議会などにおいても提唱されてからすでに20年余になる。教育委員・教育長の公募制(推薦制)は、教育委員(教育長)の選任方式に新たな工夫を導入することにより、それを企図した自治体の自治的・主体的取組みの一つである。それらの"効能"分析を含め、本研究は当初に掲げた研究目的・課題に照らすならばなお多くの課題を残している。
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