本研究はイギリス教育体系内に導入された大学評価・学校評価制度における実践や評価に対する異議申立制度の実態と機能に関する実証的研究を志向するものである。本課題は1990年代後半にその必要性が確認され、2000年代前半に制度が多様な形態で導入されている。平成17年度においては、2つの課題に注目して研究を進めた。 第一に、高等教育機関内部に制度化されている異議申し立て制度について、1990年代以降の大学改革の動向を踏まえつつ、導入過程と現状について検討を行った。特に異議申立制度として全国機関が創設された大学内の教育活動に対する申立てについて論考をまとめている。 第二に、学校教育内で16年間にわたって導入・改革が進められている学校評価制度、すなわち監査制度(inspection)制度の改革過程における異議申し立て制度の現状と課題について個別学校の事情に焦点をあてて検討を行った。その結果、申立てそのものだけでなく教育機関に対する異議申立制度が分立した状態から統一組織を設置する方向で検討された点が注目される。 研究最終年度に向けて、異議申立制度全体の実践状況と制度導入の理念について、個別機関の状況に即して検討していくこととしたい。
|