研究課題
基盤研究(C)
本研究は平成17年度からの2年間で、英国内で初等・中等教育機関および大学内外で実施されている各種評価に対する異議申立の制度化と実態について検討するとともに、英国教育改革全般のなかで、異議申立制度がどのように位置づけられ、実践されているかを明らかにし、日本への示唆を獲得することを目的とするものであった。研究成果は大きく2点に整理される。1.中央行政機関であるOFSTED(Office for Standards in Education)によって実施されている監査制度(inspection)のうち、特に公立初等・中等学校に対する学校監査制度に対する異議申立制度は、単に評価者の契約組織(contractors)やOFSTED自身との交渉で問題が解決しない場合に、独立調停者(ICA, independent complaints adjudicator)によって解決が目指されていること、さらに最終的には議会のオンブズマン制度で最終的な申立を受け付けることが制度化されており、被評価主体に対する法的・制度的配慮がなされて、しばしば被評価者優位の調停が出されていることが明らかとなった。2.英国教育改革全般のなかで、異議申立制度がどのように位置づけられ、実践されているかを明らかにすることを試みた。特にイングランドにおける高等教育機関において教育面での評価などについて異議申立制度の法制化が求められ、個別機関で対応できない場合のために、独立組織であるOIA(The Office of the Independent Adjudicator for HigherEducation)が制度化され、機能していることが明らかとなった。以上の動向は英国において説明責任が遂行される中で、消費者志向の改革が進められていることに並行して、被評価者側の権利保障の動向も無視できないものとなっていることを示唆するものと位置づけられる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
早稲田大学大学院文学研究科紀要 51(1)
ページ: 75-88
早稲田教育評論 20(1)
ページ: 279-295
Bulletin of the Graduate Division of Letters, Arts and Sciences of Waseda University vol.51, no.1
Waseda Review of Education vol.20, no.1