公立博物館の成立と維持存続の過程を解明するため、本年度は以下の研究を行った。 1. 前年度に引き続き、市立大町山岳博物館所蔵行政文書の閲覧及び目録作成を行ない、宮野典夫副館長との共著『市立大町山岳博物館所蔵行政文書目録』を刊行した。本目録は、館所蔵行政文書のうち、1951年度〜2003年度分(博物館協議会関係は、2006年度まで)を目録化したものである。この行政文書群には、創設期の原資料や、長期に亘る博物館協議会の議事録・会議資料、昭和30年代の自然保護教育実践や、現地保存型博物館構想の原資料等が含まれ、目録の完成により、今後、多様な切り口からの研究資料として活用が可能である。また、上記目録化の作業と並行し、地域住民が作った博物館としての大町山岳博物館の位置づけを検討し、日本社会教育学会にて口頭発表を行った。 2. 地方交付税制度および自治体財政と博物館への予算措置の関係を探るため、日本社会教育学会にて、ラウンドテーブル「博物館のアウトプットと予算査定」を企画、地方交付税制度の第一人者である岡本全勝氏に、財政及び行政管理の視点から、博物館建設のメカニズムや予算査定の実際を報告いただき、宮城県美術館の大嶋貴明氏、大阪市立自然史博物館の佐久間大輔氏から、博物館の存在意義と望まれる施策について議論・提案いただいた。当日の記録は公開に向け、現在校正を依頼中である。 3. 博物館法改正及び、公益法人制度改革に関しての情報収集を行い、『文化経済学』に「博物館法改正の経緯と残された課題」、『博物館研究』に「パネルディスカッション『新公益法人制度への移行と博物館』に参加して」を寄稿した。 4. 上記調査活動や周辺情報、研究上のアイデア等をブログにて随時情報提供した。
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