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2008 年度 研究成果報告書

「自己実現」言説の歴史社会学-特に思想の輸入・受容過程に焦点を当てた実証研究-

研究課題

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研究課題/領域番号 17530605
研究種目

基盤研究(C)

配分区分補助金
応募区分一般
研究分野 教育社会学
研究機関宇都宮大学

研究代表者

佐々木 英和  宇都宮大学, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (40292578)

研究期間 (年度) 2005 – 2008
キーワード自己実現 / 自我実現 / 人格 / 人格の完成 / 国家 / 個人と社会 / 教育勅語
研究概要

本研究の主題である「自己実現」は、現代語および現代教育における目標として一般化し通俗化してしまっているのにもかかわらず、その具体的内実が学術的に十分に検討されてきたとは言い難いものである。本研究は、この言葉に徹底密着し、それをめぐる諸々の「事実」を集積して、その社会的受容の様相について、特に思想レベルで展開された言説に注目しながら歴史的な観点から実証することが主たる目標であった。その結果、自己実現概念の歴史的展開をめぐって、多くの興味深い発見ができた。第一に、「自己実現」という日本語の歴史的原点は、イギリス理想主義の立場に立つ哲学者グリーン(T.H.Green)の「自我実現説=theory of self-realisation」が19世紀末に輸入・翻訳されたところに位置し、当時は「自我実現」という訳語の方が相対的に普及していた。第二に、明治期から第二次世界大戦前の時期の思想的展開として、「自己実現」の最大のキー概念が「人格」であったために、両者が極めて相関性の高い概念として扱われていただけでなく、自己実現が「人格の完成」と同義で用いられる例が頻繁に見受けられた。第三に、戦前日本における自己実現に関する輸入思想は、知識人の間に普及していくやいなや、すぐさま換骨奪胎される形で日本独自の展開を見せたが、個人主義的展開・国家主義的展開・神秘主義的展開といった三つの方向性が各々独自の展開を示したり、他の流れとせめぎ合ったり合流したり、さらには乗り換えがあったりしながら、相互干渉的に重層的に形成されていった末、国家主義的概念に回収されたと理解できる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2009 2008 2007 2006 2005 その他

すべて 雑誌論文 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Self-Actualization and/or Self-Realization in Japan : A Historical Approach to its Various Aspects2009

    • 著者名/発表者名
      Sasaki,H
    • 雑誌名

      宇都宮大学教育学部紀要(宇都宮大学教育学部) 第59号第1部

      ページ: 157-172

  • [雑誌論文] 自己実現思想における個人主義・国家主義・神秘主義-人格概念の多元的展開に関する試論的考察-2008

    • 著者名/発表者名
      佐々木英和
    • 雑誌名

      宇都宮大学教育学部紀要(宇都宮大学教育学部) 第58号第1部

      ページ: 265-280

  • [雑誌論文] 自己実現概念を方向づける歴史的基点に関する覚え書き-『人格の完成』概念との親和性を例題として-2007

    • 著者名/発表者名
      佐々木英和
    • 雑誌名

      宇都宮大学教育学部紀要(宇都宮大学教育学部) 第57号第1部

      ページ: 195-209

  • [雑誌論文] 自己実現概念の歴史的展開に関する覚え書き-19世紀末から21世紀にかけての日本的変容の概観-2006

    • 著者名/発表者名
      佐々木英和
    • 雑誌名

      宇都宮大学教育学部紀要(宇都宮大学教育学部) 第56号第1部

      ページ: 213-227

  • [雑誌論文] 戦前日本における『自己実現』の社会的受容-グリーン思想の国家主義的歪曲をめぐる覚書き-2005

    • 著者名/発表者名
      佐々木英和
    • 雑誌名

      イギリス理想主義研究年報(イギリス理想主義研究会) 創刊号

      ページ: 28-37

  • [備考] 佐々木英和『「自己実現」言説の歴史社会学-特に思想の輸入・受容過程に焦点を当てた実証研究-』平成17~20年度科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号17530605研究成果報告書、2009年3月、全94頁

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公開日: 2010-06-10   更新日: 2016-04-21  

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