研究概要 |
本研究は,大学評価を制度型大学評価と市場型大学評価に大別し,両者を国際比較の観点から検討し,その特性を明らかにしたものである。制度型大学評価は,大学自身や第三者機関による大学評価である。こうした従来の大学評価に対して,情報や雑誌の販売を目的としてなされる大学評価を「市場型評価」と規定した。両者のメルクマールは市場で商品として販売するか否かにある。 制度型大学評価は,規制による大学の質の保証に代わって,競争による大学の質の向上へと高等教育政策が転換し,大学の質保証が重要な課題となった,1990年代以降急速に進展した。とりわけ,グローバル化の進展によりこうした傾向が強められた。しかし,制度型大学評価は,国内にとどまり,国際的な範囲での評価システムの椎築は困難である。 これに対して,市場型大学評価とりわけ大学ランキングが隆盛している社会経済的背景と社会的機能を国際比較によって分析した。隆盛の背景には,安価に大学に対する情報が入手できるため強い需要があること,大学関係者や研究者も市場型評価を利用していることがあげられる。さらに,グローバル化に伴い,こうした要請はますます強まっている。しかし,市場型評価は,必ずしも大学情報を正確に伝えるとは限らないし,大学評価としての妥当性や信頼性にも技術的な問題があること,これに対して,責任の所在も明確ではないことなど,市場型大学評価の問題点を明らかにした。 次いで,市場型大学ランキングと,「制度型大学ランキング」と対比的に統計分析して,その性格を明らかにした。前者の例としてイギリスのロンドンタイムズ高等教育版の世界大学ランキング,後者の例として中国の上海交通大学の世界大学ランキングをとりあげ,両者の比較を行い,上記の市場型大学評価の問題点を統計的手法によって明らかにした。
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