研究概要 |
本研究は,既存の大学評価を「制度型大学評価」と「市場型大学評価」に大別し,両者の特徴を国際比較の観点から,分析することにより,今後における大学評価のあり方に資することを目的とする。制度型大学評価は,大学の質保証のために,何らかの公的機関が行う従来の大学評価である。これに対して,市場型大学評価は,商業的な目的のためになされる大学評価であり,その典型が大学ランキングである。本研究では,両者を必ずしも二者択一的なものとしては捉えず,いずれも長所と短所を持つものとして,対比した。 両者が必要とされる社会的背景について,大学の質保証や大学情報の提供などの需要の拡大など,共通性がある。とりわけ,市場型評価について,近年隆盛となった背景として,高等教育のマス化とグローバル化の進展により,大学情報に対する需要が増大したことがあげられる。 さらに,世界大学ランキングについて,制度型大学評価として,上海交通大学の「世界大学学術ランキング」と,市場型大学評価として,ロンドン・タイムズ高等教育版の「世界大学ランキング」を取り上げ,評価方法,評価基準,評価対象,評価内容について,計量的に詳細な分析を行った。両者の共通点としては,両者とも英語圏に有利な評価指標を採用していること,とりわけタイムズ紙のランキングにはその傾向が強いことや,評価基準について,共通の指標として論文生産性を用いていることである。相違点としては,両者は,目的・性格が異なり,共通の指標は論文生産性の一つしかないこと,さらにその共通の指標についても両者のスコアの相関は低く,大学の質について,異なる特性を評価していることが明らかになった。こうした実証的な検証と知見をもとに,大学評価のいっそうの改善がなされることが必要であろう。
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