1.日英中学生の平和意識の比較分析 平成19年6月まで、英国の主に中等学校9年生に対して平和形成方法に関する意識調査を継続して行った。コベントリー・ブラッドフォード・サザンプトン・ロンドンにある16校の中等学校から914名の回答を得た。日英の中学生の調査結果を分析することにより、両国の平和意識の違いが明らかとなった。英国の調査においては、各地でテロの発生と危険性があることが世界が平和でない大きな理由とされ、英国軍がイラクに派遣されていることが英国が平和でない大きな理由となっている。自国が平和か否かの判断において、日本の生徒が「生活に使うものや食料が豊富だから」と経済的豊かさを判断材料としているのに対し、英国の生徒は「自由だから」という社会的状況を判断材料としている。そうした判断基準は中学生が考える平和形成方法にも影響を及ぼしている。平和貢献団体として日本の生徒が医療援助団体をあげているのに対し、英国の生徒はグリーンピースやアムネスティなど環境・平和運動団体や人権擁護団体をあげている。 2.平和形成方法の教育カリキュラム開発 平和形成力を平和リテラシーと規定し、それを育成する教育方法のアイデアをまとめて、『平和形成力を育てよう』の冊子を編集した。参加型学習方法により、平和の問題を自己の問題として認識し、双方向の視点から問題把握することにより、活動を始める方法論を修得する。英国においては保護者や祖父母から戦争について生徒が聞く割合が高いが、日本では戦争体験継承のエイジェントとしての保護者・祖父母の役割が急速に低下している。戦争の実態を知ることは平和形成活動への参加動機ともなるので、戦争についての教育内容と方法を開発することが課題であることが明らかとなった。
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