研究代表者の白鳥は、今年度2006年6月に、クリストフ・シャルル著、『「知識人」の誕生 1880-1900』、藤原書店、354頁の翻訳書を出版した。本書はフランス第三共和政期のドレフュス事件を通じてなされた「知識人」の誕生について分析したものであり、その背景として当時の高等教育も重要な論点となっている。ドレフュス事件に対する学問の諸専門間の立場の差異や、大学界と当時のより広い社会との関係など、幅広い観点から興味深い議論が展開されている。読売新聞、朝日新聞などの書評欄でも取り上げられ、「高等教育および研究体制についての比較社会学的研究」という本研究課題の理解を深めるための重要な研究実績を公刊することができた。また『アレゼール日本ニューズレター』No.6に「フランスにおける大学評価の特徴-CNEを中心として」を、『日仏教育学会年報』第12号に「フランス大学学院Institut universitaire de Franceについて」を発表した(後者の奥付は2006年3月30日発行であるが、実際の刊行は2006年度)。前者では、フランスの大学評価の特徴を、全国評価委員会CNEの役割に注目しながら論じ、また後者では、CNRS等の研究を専門とする機関が重要な位置を占めるフランスにおいて、大学での研究を推進するための一つの方途としてのフランス大学学院のあり方について論じた。9月には第58回日本教育社会学会(大阪教育大学)において「フランス高等教育の評価制度」、10月には2006年度日仏教育学会(神戸大学)において「フランスにおける高等教育と研究の制度的動向」の学会発表を行った。比較を進めるための海外調査として、フランス、台湾、ベトナムでの現地調査を行い、一層幅広く研究上の知見を深めることができた。研究分担者の油井も、アメリカを中心として大いに研究成果を上げており、論文等公刊している。
|