本研究に対する科学研究費補助金の最終年度にあたる本年度は、歴史的な展開を踏まえたうえで、最終的に高等教育に関するフランス、日本およびアメリカの今日的な観点における比較研究を行なうことを目指し、これまでの調査、研究による知見を踏まえて、総合的な分析を深めていった。また研究を進めていくために必要な調査をパリにおいて実施することができた。今年度は、研究代表者の白鳥が、神戸大学社会学研究会が毎年刊行している『社会学雑誌』の編集の担当にあたったが、今年度の25号では本科学研究費補助金による研究ともリンクさせつつ、フランス、イギリス、日本等を中心とする高等教育および研究体制に関する国際的な比較を特集として行い、白鳥は論文および翻訳(原著者はクリストフ・シャルル氏)を寄稿している。近年の高等教育ならびに研究体制は、各国ともに大衆化(学生数の増大と学生層の拡大)と卓越化(国際的に優れた研究機関として研究成果をあげること)という、相反し得る方向性のそれぞれに対応することが求められている。フランスにおいても日本においても、大学の組織運営の中で学長を中心とする集権的な制度による対応の方向や、大学の外部の者による大学運営への参加、また評価の重要度の増大といった共通した方向性を見出すことができる。そうした国際的な流れは確認した上で、しかし高等教育や研究の本来的な意味を考察することもまた必要なこととなろう。高等教育や研究体制をめぐる近年の動向を明らかにするとともに、それらの本来あるべき姿を求めていく観点の重要性を、本研究を通じてあらためてとらえることができた。
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