研究概要 |
本研究は、現在イギリスで進行している教育改革の中で、競争原理に代わって重視されつつある協働原理に立脚する重要なプログラムであるリーディングエッジ・パートナーシップ・プログラム(Leading Edge Partnership Programme,LEPP)について,その中核を担うリーディングエッジ・スクール(Leading Edge School,LES)や関連関を対象とした現地調査を中心とする研究によって、その実相を明らかにしたものである。 その成果は以下の4点にまとめられる。 1.政策文書等の分析により、教育技能省が教育改革、学校改善推進の際の中心的原理として協働を明確に据えて、それに基づく「システムワイド」な改革政策を打ち出していることを明らかにした。 2.LEPPにおいて実施されているプログラムの具体的内容について、教育技能省のLESによる自己評価データベースを分析し、LEPPにおける協働の中核的要素が、多様な形態の「共有」(sharing)であることを明らかにした。 3.2005年、2006年における計13校の訪問調査時の校長などへのインタビュー調査に基づき、校長たちの間で「協働的」教育文化を重視する意識が強く持たれており、「協働的」教育文化が学校現場においても浸透しつつあることを明らかにした。 4.教育技能省とともにLEPP推進の主体となったSpecialist Schools and Academies Trust(SSAT)の担当者へのインタビュー及びSSATが主催するコンファレンスへの参加などによって、David Hopkinsが提唱する「学校主導のシステム・リーダーシップ」の進展においてLEPPが大きな役割を期待されていることを明らかにした。 以上の結果に基づき、基本原理が競争から協働へと転換されつつあるイギリスの教育改革は、依然として競争原理に立脚した教育改革が中心である日本を含む他の諸国にとっては、オルターナティブなモデルの一つとしてその成果に注目する必要があることを指摘した。
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