研究課題
基盤研究(C)
今日、「いじめ」、「学級崩壊」、「不登校」などの教育問題が山積するなか、教師の役割は幅広いものとなっている。一方で、教師の力量への注目が集まり、研修の強化や「指導力不足」教員への対策などかつての職場環境とは異なる状況も生まれている。また、この数年間にかつての大量採用時代の教師たちが退職の時期を迎え、とくに大都市部では新規採用が激増している。このため比較的若い世代にいわゆる「教員文化」が受け継がれにくい状況が生まれ、このこともあって若い世代にとってモデルとなる教師像の形成が難しくなってきているのではないか。本研究では、このような状況の下で教職就いて間もない若い世代が、何を契機にしながら自らの教師像を形成しているのか、そして、それらが今日の教育の課題とどのように呼応しているのかについての検討を、主として質問紙調査(2006年1月実施)および面接調査(北海道、兵庫、青森、東京、埼玉などで実施)をおこなった。その結果、いくつかの今日的特徴と見られるものが抽出された。それらを列挙すると次の(1)〜(4)にまとめることができる。(1)若い教師の多くは、教職が自分に向いていると感じている。(2)その一方で今日の職場の状況や仕事の量の多さに疲れと負担感をもっている。(3)さらに子どもにとって有効な教育方法や教育技術が何であるのか大きな不安を抱え、自信を失いつつある。(4)多くの教師たちは新たな教育方法や子ども理解の知識と技能を学ぶことを期待している。これらの結果を受けて、主として次の二つのテーマについて、更なる調査・検討を行った。その第1は、若い教師たちが必要としている新たな教育方法と子ども理解の学習プログラムを、教師養成および現職教育を貫いてどのように構想するかということである。具体的には本件企画者が所属する都留文科大学における臨床教育学専攻における教師養成教育の現状と意図を検討することを通じて、教師養成教育学の課題を検証した。また、本研究の過程で、知己を得たフィンランド・オウル大学カヤーニ校(教師養成学部)の教員養成教育の実態とこれを支えるフィンランドの教師養成教育改革の理念を確かめることができた。これら二つの研究を通じて、若手教師の専門的力量の形成と教職の専門性の高度化にとって、従来の「教育内容・方法研究」に加えて、教室でのできごとを体験し、記録し、言語化する「子ども体験」を反省的実践に生かす能力と同僚教師との協力関係をつくりだす能力の必要性を確認した。
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Kyouiku (The journal of Scientific Research on Education)(Association of Scientific Research on Education) No.723
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The Reorganization of Teacher Education and Task of Pedagogy(The Japan Society for the Study of Education) vol2
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