本研究は「留学生受入れ10万人計画」以来20年間の動向を、主として在日留学生の生活実態の変容に焦点を当てて実証的データに照らして明らかにすることを目的に研究を進めてきた。初年度(平成17年度)は、文献資料、新聞記事、調査資料等を収集し、次念度(平成18年度)は資料収集の補足作業と各種資料の精査と共に、日本留学経験者の補足調査を行った。 これまでの資料分析を総合すると、当初(1984年当時)は、官民一体になって留学生受入れ政策を強化し生活を支援した。在日留学生の生活は財政的・制度的に大きく改善されたはずであるが、資料を分析すると、留学生が抱える問題点(奨学金、住宅、日本人との交流満足度など)は、その問題性が低下するどころか逆に拡大しているという皮肉な結果が実証的に明らかにされた。この点は本研究結果の大きな成果である。 具体的には、第マに、留学生の量的拡大が質的低下をもたらし、不法滞在や外国人犯罪などの負の社会現象として注目されたこと。そのため留学生支援の社会的意欲がそがれたこと。第二に、量的拡大が、個々の留学生に支援の恩恵(奨学金や住宅など)を受けるチャンスを減少させた。従って、第三に、量的拡大は出身国の地域的偏在(中国大陸)をもたらし、留学生イメージを単純化したこと。第西に文科省と法務省の政策的な不一致によって、留学生受入れの一体的な機運を削いだことなどである。従って、留学生の生活は総体としては変容しているが、改善されたとは言いにくいという状況である。 これらの結果は、ほぼ常識的結論であるが、実際に統計的資料的データを積み上げて実証的に明らかにした、その意義は大きい。今後、そうした実証的データを含めて研究結果は関連学会や印刷物、電子メディアを通して広く公表する。
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