本研究は、平成17年度から18年度にかけて高等学校や大学などの学校機関を卒業したあともフリーターやニートといった状態に陥る若者をめぐる問題について研究をおこなった。本年度は以下の問題について主に質的調査を中心におこなった。(1)どのような学力・家庭背景をもつ若者がフリーターやニートになるのか。(2)若者研究の進んでいる欧米と比較したときに、日本のフリーターやニートにはどのような違いがみられるのか。(3)日本に特徴的なフリーター・ニート像を踏まえたうえで、専修学校を活用した「若者の自立・挑戦事業」はどのように進めていく必要があるか。 本年度の研究の中心にあったのは、いわゆる「若者の自立・挑戦事業」の対象にあたる若者はどのような状況からフリーターやニートといった状態に陥るのか、質的調査によって彼らの意識を明らかにすることであった。彼らは大きく分けて3つのタイプに分類できる。1つめは自分の希望する職業がわからず、職業を先延ばしするために低賃金労働や無業状態になる若者である。2つめに自分の希望する職業は別にあるが、その職業に就くための腰掛け状態として低賃金労働や無業になる若者である。最後に、就業という人生の段階に背を向け、「自分が何をしても変化するものはない」という世捨て人のような意識をもつ若者であった。彼らの多くは正規雇用に就きたいという考えをもつ一方で、自分の希望する仕事に就くためならば、たとえ賃金や雇用形態が劣悪であってもかまわない、と考えていることが明らかとなった。若者のなかには「自分の就きたい仕事につくことが、自分の人生にとって一番重要である」と考えており、結果的にその仕事が低賃金であったり、労働条件が劣悪であってもかまわない、と考えている者さえ存在した。そのように、就業に対して意欲的な若者がいる一方で、就業に背を向けている若者の多くは自分が一生無業や低賃金労働で働くことに賛成しており、彼らは「若者の自立・挑戦事業」のような就業対策において、十分な効果が期待できるとは考えにくい。 フリーターやニートになる若者には、単純にひとくくりにできない背景を抱えているため、「若者の自立・挑戦事業」においては多様な背景を抱えた若者を受け入れるための職業訓練プログラムが必要になるだろう。
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