研究課題
基盤研究(C)
本研究は、平成17年度から18年度にかけて、主として専修学校を卒業したあともフリーターやニートといった状態に陥る若者をめぐる問題について研究をおこなった。今回の研究により明らかとなったことは以下の通りである。(1)専修学校修了生の中でもどのような学力・家庭背景をもつ若者がフリーターやニートになるのか。(2)若者研究の進んでいる欧米と比較したときに、日本のフリーターやニートにはどのような違いがみられるのか。(3)日本に特徴的なフリーター・ニート像を踏まえたうえで、専修学校を活用した「若者の自立・挑戦事業」はどのように進めていく必要があるか、である。フリーターやニートなどの若者に対してアンケート調査およびインタビュー調査により、彼らの多くに学力的な偏差は存在していなかった。彼らの高校階層を比較した場合、必ずしも高校階層下位に集中しておらず、もっとも多いのは高校階層中位であり、高校階層が上位の若者も少なからず見られた。若者研究が進んでいる欧米では、フリーターやニート状態に陥る若者の多くは人種マイノリティや高校中退者など、社会的に排除(exclude)された存在であり、学力という側面を切り口にした場合、彼らは学力の低いものが多くを占める。それに対して、日本のフリーターやニートは社会的に排除された存在のみではない。どの高校階層からであってもフリーターやニートは存在しており、さらにはいずれの高校階層からでも学校成績の低い若者が多く存在していることがわかった。高校時の学業成績の優劣によってその発生率に差があらわれるということは、現状では専修学校進学層に、学力低位群が多くを占める構図であることは事実であり、そこに就業意識と学力のねじれを指摘できる。彼らの多くは正規雇用に就きたいという考えをもつ一方で、自分の希望する仕事に就くためならば、たとえ賃金や雇用形態が劣悪であってもかまわない、と考えていることがわかった。また、一部の若者のなかには、たとえ就業に対するどのような支援を受けたとしても、十分な効果を期待できないことが考えられる。「若者の自立・挑戦事業」においては自らの雇用条件を向上するためのプログラムや、就業に対する意識を向上させるための支援が必要になる。
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佛教大学教育学部論集 第18号
ページ: 79-106
Journal of the Faculty of Education, Bukkyo University no.18
佛教大学教育学部学会紀要 第5号
ページ: 7-18
佛教大学教育学部論集 第17号
ページ: 81-98
神戸親和女子大学教育研究センター紀要 第2号
ページ: 63-76
Bulletin of The Faculty of Education, Bukkyo University vol.5
Journal of the Faculty of Education, Bukkyo University no.17
Bulletin of Research center for Higher Education Kobe Shinwa Women's University vol.2