研究概要 |
1980年代以降、後期中等教育段階の高等学校の改革が進められている。本研究では、まず、近年の高校教育の改革にみられる諸特徴について文献を手がかりに明らかにし、改革のキーワードになっている高校教育の多様化の問題を競争と平等という2つの理念から検討することの必要性と意義を論じ、研究デザインを提示している。 この研究デザインに基づき、総合学科高校、普通科高校、専門学科高校に関して、それぞれの教育改革の内容と改革の課題や方向性を、実証的な調査データを収集し、検討した。まず、17年度は、総合学科高校に焦点を合わせた。一つ目は、高校長に対する調査を実施した(調査対象は240高校の校長)。従来からの普通科と専門学科の2学科に比べて、近年の改革で新しく生まれた総合学科への期待やそこでの教育の現状、課題をこの高校に勤務する教師の視点から明らかにしていった。二つ目は、総合学科高校に在籍する高校生の生活と学習の現状、その意識を取り上げ、新しい改革である総合学科での教育のなかみを明らかにしている。 つぎに、研究の実施二年目には、普通科に焦点を絞り、普通科における改革の現状と課題を、普通科を設置している全国の公立高等学校から1600校を抽出し、その高校長を対象に調査を実施した。調査の主な内容は、勤務する高校での改革への取り組み、改革の現状,改革の成果、改革を成長に導く条件・要因等で構成した。とくに、改革の成果を生み出す要因として、校長をはじめ教職員の貢献が重要ではないかと構想し、このことを実証的データを用いて検討を加えようとした。そして、研究の実施三年目には、専門学科の改革に焦点を絞った。専門学科のあり方は、総合学科への改編との関連で論議されている。専門学科を設置している公立高等学校1080校の高校長を対象に調査を実施した。調査の主な内容は、学科構成と設置経緯、生徒の学習と生活の現状、勤務校の専門学科の特色、専門学科の魅力、教育の重点項目、進路指導の状況等である。大学・短期大学、及び専門学校への進学率が高まる今日の時点で、専門学科のあり方、今後の方向性が各方面から問われているが、この点に関して高校教育の改革を通して高校教師はどう対処しようとしているに関して、教師の勤務する高校の伝統、学校規模、設置されている都道府県の産業構造等によって改革を巡り大きく意見が分かれていることが実証的に明らかになった。
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