本研究では、生涯を通した健康生活教育の在り方を検討する目的で、これまで高齢者を対象とした生活実態調査及び小・中・高の家庭科教育の成果と課題の検討を行ってきた。今年度は、健康教育が学校教育に位置付けられ、また衣、食、住、家族を含んだ家庭生活の学習が複数の学習領域で小学1年生より実施されている台湾の教育内容を捉え、それらを基に日本と台湾の児童を対象に生活認識・実態に関する比較調査を行い、今後の我が国の健康生活教育の在り方を検討することを計画した。 台湾における2003年版課程綱要に基づいて作成された教科書の内容を調査した結果、家庭生活関連学習として、(1)住生活、(2)食生活、(3)家族、(4)環境、(5)健康、(6)自立・自律、(7)実習等の内容が小学1年生から扱われており、(1)〜(6)は日本より幅広い内容が取り上げられていた。これらを基に、(1)家事の認知度、実践状況とその理由、(2)食の知識・認識、(3)環境を考えた実践・認識、(4)自律的生活意識(健康、家族の一員・関わり)、(5)衣・食・住の自立度に関して小学6年生を対象に日本(258人)と台湾(262人)の比較調査を実施した。その結果、(1)は認知度において食以外は台湾が高、実践状況は台湾が高、その理由において、「家族の一員として当たり前」など台湾が有意であった。(2)及び(3)は日本が高、(4)は台湾が高、(5)は料理作り及びボタンつけは日本が有意であった。以上より、日本では食に関する認識、実践状況が台湾より高い結果が捉えられ、これは学校教育において推進されている食育の影響が強いと推察された。しかし、健康を考えたり、家族の一員として生活を自律的に行うこと、さらに家庭の仕事の実践状況は全般的に低い結果となった。これらより、生涯を通して健康や自律的な生活を営むためには、学校教育において小学校低学年から自分や家族を見つめる家庭生活学習を実践的にまた家庭や地域との連携を図った内容を構成すること、その際、生活認識をも育成していくことが重要であることが見出された。
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