本研究は、平成17年、18年の2年計画で、国語教員志望者及び現職国語教員の論理的思考力を速成するための方法とカリキュラムを開発する目的により、古典レトリックでトピカと呼ばれた一種の思考術を発展させ、教員養成の場で、国語教員に必要な論理的思考力を短期間で育成するための理論(思考の転用理論)として構築することを試みたものである。平成17年度は、アリストテレス流のトピカ(トポス)を応用し、「力」→「量」還元による思考の転用理論と方法とを記述した教科書を作成し、学術専門図書として出版した。この著書の特色は以下のとおりである。 1 日常の読書のなかで、思考の型を情報として採取する方法を示した。 2 古典レトリックのトピカで分類された型だけでなく、型にまとめられない思考をも採取の対象とした。 3 上記の二つにつき、自らの文脈において、自分の思考として転用する方法と実例を示した。 平成18年度は、小・中・高の現職教員の協力を受け、上記で提案した理論を小・中・高での国語教育に応用するための方法を研究し、学年別の資料とカリキュラムを備えた作文教科書を作成した。(現在印刷中。11月に教育図書として専門書店より出版されることが決定している。)この教科書の特色は以下のとおりである。 1 現行の国語の時間で無理なく実践できるように、体系的訓練ではなく、最も一般的で汎用性の高い思考の型(類似からの議論)を取り立て、その訓練に限定した。 2 学年を、「小学校中学年」「小学校高学年」「中学校」「高等学校」に区切り、それぞれの学年の記述が、基本的に互いに無関係に独立し、まったく同じ形式で繰り返されるという構成を採用した。(これにより、どの学年担当の教師であっても、予備知識や前提となる訓練を必要としないで利用することができる。) 3 思考方法だけでなく、思考した結果を意見文にまとめるための、基本的なモデルと作文例を併せ挙げた。
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