本研究は、研究代表者がこれまで進めてきた、久保貞次郎の美術教育論に関する研究と鑑賞教育(創造美育運動において軽視されたもの)に関する研究をふまえ、我が国における児童中心主義(創造主義)の美術教育の実態や戦後美術教育に与えた影響について、創造美育運動を中心に実証的に明らかにするとともに、表現活動の偏重と鑑賞活動の軽視という我が国の美術教育が抱える構造的な問題を解決する方策を探ることを目的としたものである。研究を通し、以下の点を明らかにした。 (1)創造美育運動の組織及び活動原理 一般に流布している創造美育運動のイメージが、どこまで運動の実情や実態を反映したものであるのか、組織や運動の実態はどのようなものか、1953年から1978年に至る8種類の会員名簿を中心に、実証的に明らかにした。 (2)創造美育運動における北川民次の位置づけ 1937年から1978年に至る北川民次の著作を精査することにより、創造美育運動における北川民次の位置付けを明らかにした。 (3)創造美育運動を通して具体化された児童中心主義(創造主義)の美術教育の特色 ウィリアム・ジョンストンとヴィクター・ローエンフェルドの美術教育論の分析を通して、1940年代における欧米での児童中心主義の美術教育研究が、幼児期や児童期のみならず、造形表現の過渡期とされる思春期の子どもを対象とする美術教育に対して関心を強め、思春期における美術教育の在り方を追究していたことを明らかにし、我が国における児童中心主義の美術教育の特異性を明らかにした。 なお、以上の研究を通し、新たに以下のような研究課題が浮上した。 (1)創造美育運動に対する内部及び外部からの評価 (2)創造美育運動と同時代の社会及び文化との関連 (3)創造美育運動の全体像の把握と運動が果たした歴史的意義
|