本研究は、今日のグローバル社会における「文化学習」の教育的意義と可能性を究明することを最終目的としている。本年度の研究内容と成果は、以下のとおりである。 1.ドイツのベルリン、ドレスデン、ポツダムの都市文化、歴史、美術、町並、世界遺産について現地調査を行なった。博物館所蔵資料・史料のリスト、関連書籍、スライド等を収集し、「文化」の維持・保存の意義、旧東西ドイツの歴史的痕跡を調査した。「文化学習」の教材化、史料・資料の扱い方や活用の方法に関する基礎的な研究を行った。 2.ドイツのバイエルン州及びバーデン・ヴュルテンベルク州の学習指導要領、教科書を収集分析し、小・中学校における「文化」に関する学習の実情とその特色<総合性>と教育的意義を明らかにし、拙稿「ドイツにおける社会系教科カリキュラムと『教科横断的学習』」(近刊)にまとめた。 3.「文化学習」の基底をなす市民性・公共性の育成に関する中学校社会科の実践的研究を行った。一方では、子どもの社会意識の諸相の観点と、他方では、大人の子どもの教育への期待とくまなざし>の観点から今日の教育課題である市民性と公共性の育成の問題を抽出し、市民社会組織との協働・連携を図り、ローカルマニフェストを活用したシティズンシップ教育の実験授業を構想し、桶川市立加納中学校で実践した。そこからカリキュラム改造の観点として、(1)内容・題材としての「公共問題」、(2)方法・過程としての「他者とのかかわり」、(3)学習モードの「漸次的な転換」の3点を提示した。 また、シティズンシップ教育を実現するためには、協働を核とした「教育コミュニティ」を形成子ることの必要性が明らかになった。
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