研究概要 |
前年度までの調査により,学習による「エクイティ(公正)」の認識・深化を進めるためには,家庭やコミュニティをも含んだ学習環境全体にわたる「コンプリヘンシブ児童生徒支援システム(Comprehensive Student Support System)」が必要かつ重要になっていることが明らかになった。このことを受けて,今年度はアメリカ・ハワイ州の小学校における授業観察調査を中心とした学校調査に加えて,州教育局における「コンプリヘンシブ児童生徒支援システム」についての資料収集を行い,あわせて教師や専門官に対するヒアリングを行った。 こうした調査研究を通して,当初は「エクイティ」が多文化社会における文化の相互理解のためのアプローチに絶対的な意味を持つ概念であると考えていたのが,「エクイティ」が本質的にもつ負の側面を「コンプリヘンシブ」という概念によって修正しうることが明らかになってきた。これをもとに「エクイティ」的な認識を深めるための学習内容構成のあり方について,次年度の研究における「エクイティ教授」の「モデル化」のアイディアの蓄積に努めた。 第18回日本公民教育学会全国研究大会(平成19年6月,於東京学芸大学)において,「多文化共生とアイデンティティの育成」の発表を行い,赤司ほか編著『多言語・多文化社会へのまなざし』(白帝社,2008年3月刊)に「多文化社会アメリカにおける『平等保護』のためのアプローチ-多文化教育の『コンプリヘンシブ』概念でみるハワイの教育改革-」(pp.265-285)を執筆した。
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