音楽という営みが本来もっている創造性や総合性が生きる学習プログラム開発のための基礎的研究である本研究は、幼稚園から小・中学校までのスパーンを視野に入れた系統的な学習プログラムづくりである点、幼稚園・学校現場と大学が協働で構想・開発することなどが特色である。そのための基盤づくりとなった17年度は、学校現場との研究交流という点では、幼稚園と小学校において大きな成果を得ることができた。主に幼稚園でフィールドワークを展開する研究分担者の今川は、日常表現と音楽表現との関係性、とりわけ「声」と「音遊び」に着目し、それらが生きるプログラムの開発に取り組んでいる。幼・小をどう関連させ結び付けていくかが今後の課題である。研究協力を呼びかけた小学校の中では、和歌山大学教育学部附属小学校の江田司教諭による言葉・動き・音楽を結び付けた音楽づくりの学習プログラムが際立っている。子どものもっている様々なイメージを音・音楽へ収斂させていこうとするこのプログラムは、まだまだ改善の余地は残されているが、創造的な音楽学習の概念を広げる可能性をもつものとして高く評価できる。 平成17年12月17日には、本研究の一環として、立教女学院短期大学において「芸術表現教育フォーラム〜子ども・遊び・アート〜」(12月17日)を開催した。佐藤学氏(東京大学)と河邉貴子氏(立教女学院短期大学)による基調対談では、子どもの表現をどうとらえはぐくむかという根本問題が事例を通して具体的に議論され、「幼児からの発信」「障害をもつ子どもの音を介した自己表現」「音楽をつくる」をテーマに取り上げた各分科会では、発表者とフロアの間で活発な意見交換が行われた。このフォーラム等を通して明らかになった問題点や課題を踏まえて、今年度具体化までには至らなかったプログラムモデルを来年度早々に構築し、検証・再構成することが焦眉の課題である。
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