本研究は、幼稚園から小・中学校までを視野に入れた、系統的な音楽学習プログラムを開発するための基礎研究であり、実践者と研究者の協働が大きな特色である。17年度は、「芸術表現教育フォーラム〜子ども・遊び・アート〜」を開催し、子どもの表現をどうとらえはぐくむかという根本問題を軸に、「幼児からの発信」「障害をもつ子どもの音を介した自己表現」「音楽をつくる」といったテーマについて議論を深め、その成果や課題を引き継いだ18年度は、実践研究の視点を一層焦点化するために、「創造性とイメージ」をテーマに研究会を開催した。そこでは、幼児の音楽活動における創造性とイメージに関する発表、インタビュー調査等を通して音楽科教育における創造性を問い直した発表、能における「わざ」の習得過程を分析・検討した発表、「つくって表現」の内容の系統性及び音楽的な質の問題を追究した発表が行われた。幼児の日常表現と音楽表現との関係性、とりわけ「声」と「音遊び」に着目したグループは、それらが生きる学習プログラム開発のための基礎研究として理論構築と事例研究に取り組んだ。日本の伝統音楽の中から能楽を対象としたグループは、今日的視点及び歴史的文脈からわざの習得過程を理論面、実践面より明らかにした。「つくって表現」のグループは、実践現場の意識や指導の状況を調査研究するとともに、教科書の分析・検討を通して、学習プログラムの方向性を探究した。 17年度から継続している江田司教諭(和歌山大学教育学部附属小)との共同実践研究では、言葉・動き・音楽を結び付けた学習プログラムの再構成に取り組み、モデル授業の検証を行った。子どものもつ様々なイメージを音・音楽へ収斂させようとするこのプログラムは、確かに改善の余地や課題も少なくはないが、表現・鑑賞活動における創造性の育ち、系統的な表現教育への可能性を拓くものである。
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