「芸術表現教育」という観点から系統的な学習プログラムを開発・展開するための基礎研究である本研究は、幼稚園や学校現場と大学、すなわち実践者と研究者が協働し、相互交流を図りながらプログラム開発のための理論的枠組みを構築した点に特色がある。本研究では、フィールドワークや実証的研究と結んで理論研究を深化、発展させるとともに、幼稚園や学校現場と連携し、事例分析・授業研究を通してプログラム開発の方向性や課題的視点を明確化した。 平成17年度は、研究の一環として、立教女学院短期大学において「芸術表現教育フォーラム~子ども・遊び・アート~」(12月17日)を開催し、佐藤学氏(東京大学)と河邉貴子氏(立教女学院短期大学)による基調対談と三つの分科会を通して、子どもの表現をどうとらえはぐくむかという根本問題を中心に、幼児の表現や障害をもつ子どもの自己表現、音楽科における創造的活動などについて、事例を介した実践的な協議を行った。 このフォーラムを機に「芸術表現教育研究会」を立ち上げ、フォーラム等を通して明らかになった問題点や課題を踏まえつつ、学習指導要領改訂の動向なども視野に入れながら、平成18年度は子どものイメージや創造性をはぐくむための実践研究を推進した。東京藝術大学で開催された研究発表会(12月16日)では、幼児期のイメージのとらえ方や学校音楽における「つくって表現する活動」の在り方を再考する視点、「能」を窓口にした日本音楽における「わざ」の習得過程に学ぶものなど、多様な視点から芸術表現教育を実践的にとらえ直す方向性や課題について、その研究成果を明らかにした。
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