明治検定期算術教科書(明治19年〜明治37年)における分数論については、初等数学としての分数論の原型の形成(第I期・前期)から、それに対する部分的変容の進行(第I期・後期))を経て、学校数学としての分数論の原型の形成(同(第II期)へと至る展開を見ることができる。 本研究においては、上記の時期区分に従い、各時期の教科書が備えていた教育内容構成の特徴を解明すると同時に、その結果について、教育課程に関する法令、教育実践研究の展開、高等小学校の性格の変化等との関連等を含めた形で、総合的な考察を行った。ただし、報告書においては、具体的な分析対象を第I期・前期の教科書に限定した。 明治検定期(第I期・前期)は、初等数学としての分数論の原型が形成された時期であり、その内容においては、今日においても継承を必要とする貴重な遺産が数多く含まれている。報告書においては、分数に関する教育内容構成全般を対象として教科書分析を行い、この点を具体的な形で示した。分析においては、教育内容の分類と順序、定義、性質、大小関係、四則演算(加法、減法、乗法、除法)、代数的性質、整数の性質との関連付け等について、視点を設定した。
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