本年度の研究においては、研究目的に従い以下の研究を実施した。 1.比較教育学的アプローチに基づく研究:フィンランドのヘルシンキ大学及び市立中等学校においてフィールドワーク(大学関係者と中等学校家庭科教師へのインタビューと授業観察、教科書・ナショナル・コア・カリキュラムの収集)を行い、中等家庭科教育の実態分析を行った。その結果、中等家庭科教育を担当する教員養成教育は、他教科の教員養成教育とは違った方法に基づいてなされていること、フィンランドでは第7学年から9学年まで家庭科が課されており、学習内容は「家族と同居」、「栄養と食の文化」、「消費と社会の変化」、「家庭と環境」から構成され、実際の授業においては「栄養と食の文化」が重視されていること、などを明らかにした。 また、イギリスとアメリカに関しては、文献研究を実施し、イギリスに関しては、教科「デザインとテクノロジー」のナショナル・カリキュラムを、アメリカに関しては、全米家族・消費科学教育スタンダードについて、家族とキャリア教育の視点で分析した。 2.歴史的アプローチに基づく研究:わが国の戦前の中等教育段階における家庭科教育に関して、明治32年の高等女学校令(同施行規則)及び教授要目(いずれも改正を含む)と教科書を取り上げ、主として「家事科」を対象として、家族とジェンダーの視点から分析を行った。現在、収集した資料の分析中。 3.実態調査に基づく研究:わが国の家庭科教師のライフヒストリーを分析するための事前準備として、調査の方法及び調査内容に関して、他研究領域における先行研究を分析した。また、研究協力者(調査対象者)に関しては現在、選定中。
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